2020年製作のイタリア製C級SF作品。いわゆるタイムループもの(原題そのものだ。)で、腐るほど観てきた中でも納得の小品である。
監督も主役も知らないが、結構練られた構成で矛盾を感じさせないタイムマシンの話だ。本作は直列時間移動を前提としているが、物語の主人公となる科学者親子の議論の中で、パラレル時間軸の可能性にも触れている。しっかりとタイムループによるパラドックスにも配慮がある設定だし、なによりも長閑で美しいイタリアの田舎風情が、ややこしい話をソフトフォーカスしてくれていた。あの美しい街並みはウルビーノだろうか。さっそうと走るベスパと共に実に絵になる。
さて、本作は一見すると間の悪いぎこちなさを感じる。それは、3回に渡るタイムループの伏線をちりばめたためで、それをあえて分かるように見せている節がある。これはある意味親切な編集であり、リピートせずとも何とか全貌を理解してもらおうとする配慮と受け取った。それに、他のタイムループ作品にはない可愛らしい風情があって、ラストの締め方もほんわかとさせてくれる。短時間で低予算という枠の中で、魅せるセンスが素晴らしい良品だと感じた。お勧めだ。