シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

ミッション: 8ミニッツ

 2011年公開の近未来B級SF作品。

 ツタヤで未見のSFを物色していて、好きなタイムループっぽい作品と踏んでレンタル。ところが予想外の話で、久々の掘り出し物だった。

 電車爆破テロの犯人を追うため、死んだ乗客の脳内エコーを統合してバーチャル空間をプログラムし、そこへ主人公の意識を何度も転送して事件を解決するストーリーだ。つまりタイムループではなく、仮想空間を使った犯人捜しなのだが、本作の魅力はその奥にあった。

 類似の世界観を使った名品として、デンゼル・ワシントンの「デジャブ」が思い出される。また、スタトレTNGにも本作のアイデアがありそうだ。92話「アイデンティティー・クライシス」がそう。だからオイラは本作の主題が、ホロデッキのレジェンド的なSF感で把握すればいいと思っていた。

 繰り返される過去の8分間の展開は、息つく暇をあたえない。ただ、事件の真相に迫るに従い、主人公が列車から降りて犯人を追ったりするのは変だと思い始める。この仮想空間は、爆死した乗客の記憶を集めたプログラムではなかったのか?電車を降りては話が続かんだろう。TNGで、ホロデッキを出ればホログラムは消えてしまう理屈だ。クライマックスまでイマイチな脚本だと思っていたが、ラストで一本取られた。

 SF慣れした人ほど、あのハッピーエンドなラストには面食らう。ところが、見直してみれば気が付かないレベルで伏線も張ってあるのが分かった。過去の作品なのでネタバレするけど、何度も転送していたのは仮想空間ではなく、パラレルワールドであったという落ちである。これは見事なシナリオだ。近未来SFなので、わずかでもファンタジックな方向に転換すれば、中途半端な駄作になるだろう。実に絶妙なつくりだ。

 監督はデビッド・ボーイの息子で、すごい才能である。ぜひ、デビュー作の「月に囚われた男」も観てみたい。


映画『ミッション:8ミニッツ』特報