シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

ウィルソン ベネシュ ARC

 隣町のショップで見たことのない小型スピーカーがあった。さっと見回してすぐに只者ではないのが見て取れる。どうやら中古品のようだ。

 背面のプレートを見るとイギリス製らしいが、よく分からない。店員に聞いてウィルソンベネシュ ARCと判明したが、あまり聞かないメーカーだ。取説があるので読んでみる。どうやらイギリスのガレージメーカーのようで、2006年にペア70万円ほどで発売された希少品だ。後方に絞られた涙形のエンクロージャーは、なんとカーボンを成型して作られている。18㎝2ウェイでネオジウムマグネットの強力ウーハーのようだ。バスレフ穴が下にあるので、専用のスタンドと一体になっており、その造りは国産では見られないセンスが感じられる。さっそく聴かせてもらおう。

 まだアンプが温まっていないのに、大変整った帯域バランスと耳馴染みの良いスムースな音が流れてくる。ほぼ真横に移動してもバランスが崩れず、指向性も実に広いようだ。ダイアナ・クラールウィリアムス浩子の声がとても心地よい。ただ、音像が立たず、奥行感が無いのはセッティングのせいだろうか。駆動機器は国産ハイエンド機器なので、この手の小型スピーカーならもっと実力があるはずだ。ソフトをジョン・ウィリアムスのウィーンフィルに変えてみる。オーケストラの見事なスケール感に圧倒され、小型スピーカーの枠ではない。シルクドームのツィーターからは金属振動盤には無い滑らかな美音が聴かれ、自然な風情に感心させられる。ムターのヴァイオリンが実に耳障り良い。聴いているうちに奥行きが出てくるようになってきた。

 これは興味深いスピーカーだ。サランネットを外すと、どうやら右チャンネルのウーハーは新品のようで色が違う。理由と修繕の経緯も聞いたが、機器の劣化や不良が理由ではないようだ。このウーハーユニットは一つ9万円もするらしい。特別に交換前のユニットを見せてもらったら、ネオジウムマグネットはつぼ型のヨークに封入してある。 音像が立たず奥行きが浅いのは、左右ユニットのエージング差にあるのかもしれない。表面の色と同様、時間が経てば解決するに違いない。

 現用のTADモニターに変わるサブスピーカーは無いと断言したが、本スピーカーは中古品でかなり値頃だ。偶然見かけた一品モノとして結構悩ましい存在である。