シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

魔界転生

魔界転生は娯楽作家の山田風太郎が作った荒唐無稽な時代劇で、戦国末期から江戸初期に活躍した剣豪を集めて対決させようという、和製のリーグ・オブ・レジェンドアベンジャーズといったところだ。
 沢田研二が主演した角川映画が有名だが、オイラは最近、とみ新蔵作画による漫画を目にして実に興味をそそられた。とみ新蔵は自身も武術家で実践剣術の造詣に深く、彼の漫画は他の時代劇とはそのリアリティが決定的に違う。虚々実々な実践の解説たるや舌を巻くものだ。そんな彼が描いた魔界転生は原作に近く、魔物を相手に活劇を展開する話なれど子供向けではない。成人向き娯楽劇画としてシッカリまとまったものだ。
 原作の柳生十兵衛は無敵のスーパーヒーローではなく、転生したバケモノ剣豪達とは周囲の助力を得ることで、ヘロヘロになりながら勝利していく。観終われば十兵衛が強いわけではなく、魔物になった剣の達人が邪念と疑心に捕らわれて自滅してくのがテーマになっているのがよくわかる。この根幹思想が映画では無い。想像し得る当時の最強クラスの剣豪達相手に十兵衛一人で敵うはずもない。
 かといって、1980年代初期に公開した映画版は決して劣るものではない。深作欣二監督らしく、輪を掛けたエンターティメントとして見事に昇華させた。そのために原作からかなり変更し、魔物はより一般的に認知度が高い人物に変えている。それも剣豪にこだわらず、立ち合いの妙技に興味がない面々にも受け入れられた。感心するのは、原作にある転生に必須な女体との交わりをやめることでR指定を回避し、代わりに男の色気で対抗した点である。沢田研二天草四郎として悪のリーダーに据えたアイディアは、原作よりも好ましいと感じる。村正といったアイテムやガラシャ夫人の採用なども、飽きのこないゲーム要素として上手いと思う。
 バブル当時でも大変豪華な俳優を揃えたビックリ箱映画にしては、製作費が異常に安い。魔界転生を今リメイクしたらどうだろうと想像したくなる。


クライマックスはもちろんCGではない。NGの許されない命がけの撮影。
このカッコよさ、千葉真一がハリウッドでリスペクトされるのが分かる。