シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

ランダム 存在の確率

 2013年のC級SF作品。まさに低予算でアイデアと企画力で勝負した作品だ。
 本作のDVDのパッケージを見ると、相当難しいハードSFだと自らハードルを上げてPRしている。まさにSFマニアをターゲットにした勇気ある一品なのである。結構他のブログでも取り上げられていて絶賛されている。しかし天邪鬼なオイラはそれが面白くないので、否定的な意見を述べたい。
 量子論をバックにしたハードSFで多くの賞を取っている・・となれば相当な気構えで拝見したのだが、拍子抜けするほどありふれたアイデアである。なんだかんだと理屈を付けているが、これは単なるパラレルワールドの接点における奇妙な出来事というだけの話である。TNGの163話「無限のパラレルワールド」で御馴染みだ。
 一度次元の交差点を通過すると、別の世界に来てしまうというのはハードSFっぽい設定だが、疑問も出てくる。パーディの8人がそれぞれ異なる世界の人間同士混ざってしまい、混沌としてくるのはたしかに面白い。しかしパラレルの世界が時系列も異なっている設定のため、異世界の人間が入り込んで気がつかないわけがない。たまたま同じ人間がいないときにやってくるなんてご都合主義もいいところで、ハードに造り込むなら突込みどころはあってはならない。まあ地味ながらも緊迫感を上手く引き出しているし、キャラが分かりやすいという点はスリラー作品として合格だ。
 クライマックスで主人公の採った手法がユニークであるが、演出が悪い。せっかく冒頭のキャラ紹介で、複線を張っているのに生かしていない。別の世界の自分を殺して成り代ろうとする結末が突拍子も無く見えてしまうのだ。主人公の感情の動きを追っていないので、繋がりに違和感が生まれてしまうのである。
 そして意表をつくラスト、まったく物語の核心を突いていない。このストーリーならば、主人公は完全犯罪をしでかして別の自分に成り代り、ハッピーな人生を得た・・というダークな結末であるべきだ。
 これは掘り出さなくてよかった作品であった。