懇意のショップにすごい中古がゴロゴロ入ってきた。数々の高価なゴトーユニット、極上のビンテージ機器などなど。マランツ7のオリジナルが、未使用じゃないかと思えるほどピカピカ状態!中でもオイラの目を引いたのが、表題のアルテック890Cボレロだ。
オイラはこのスピーカーを知らない。その古式たたずまいは実にオシャレで、傷ひとつ無い極上品だ。調べてみると、45年前のアルテックにしては小型でパッシブラジエターを使った珍品であることが分かった。ユニットのコルゲーションエッヂは新品のようなミテクレである。どうやって保管していたのだろうか?
音を聴きたくてたまらくなり、とりあえずFASTのセパレートで音を出すと薄い音である。で、店員がマッキンに繋ぎ変えて濃厚に一変した。しかしコテコテすぎるので、プリをアキュにして自宅のシステムに近くしたところ、いい感じになってきた。セッティングが最悪であるが、それを承知でこのスピーカーを評価しなくてはいけない。
時代がそうさせるのか、古いジャズやクラシックの雰囲気はバツグンだ。枯れた音が味のある音に聴こえてくる。最新録音のCDを鳴らすと、高音質な素性はそのままにセピア色が付いてくるのが面白い。
背面に3段階のアッテネーターがある。高域を3dBアップに切り替えてみると、これが現状のセッティングでは大正解。素晴らしいバランスとサウンドだ!再び最初から聴きなおすと、魅力度一変、ジャシンタや藤田恵美の高音質盤が実に心地よい。オーケストラを聴いてみると、その溶け込みは絶妙だ。いつまでも聴いていたくなった。
オーディオは解像度、透明度とは無縁の境地もあるのが実感できた。たしかに、音像定位や音場の広がり、奥行き感は無いに等しい。でも、それは必要なのか?と古参のマニアが言うのも分かる気がする。この音色は何物にも変え難い魅力だ。加えてタイムマシンで持ってきたかのような極上品である。
こんな出物は二度とないんじゃないか。早い者勝ちだ。