シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

かぐや姫の物語

 周知の通り、本作はアカデミー長編アニメ部門で賞を獲り得なかった。なんでか?
 大変美しい作画で、水彩画調の趣が古式日本の風情とマッチして心が癒されていく。「となりの山田くん」でもあった手法であるが、本作は芸術といってもいい美的センスが感じられた。また愛らしい人物が実にいい。映像として100点満点中98点をあげたい。
 物語はいわゆる竹取物語であって、変に脚色改変することなく古典文学らしさを保っている。昔の沢口靖子がUFOで帰っていく豪華絢爛バブルSF大作とはかなり違うのだ。それでもかぐや姫の心情描写が本作のキモであるので、ある程度オリジナルな味付けはある。でも、それがむしろプラスになっているから絶妙なバランスだ。
 オイラはラストの月に帰るくだりをどうするのか大変興味深かった。かぐや姫にその記憶が蘇るタイミングと罪が露にされたとき、なるほどと頷くことになる。が、この映画のキャッチコピーであった「姫の犯した罪と罰」は子供には分かりにくいだろう。また、その罪と罰も今の常識で考えれば疑問だ。だからか知らないが月からの使者は仏様の姿で現れ、仏教の影響が濃い当時の古典だから・・と監督は釘を刺しているように思えた。
 この作品は深い味を持った大人の映画である。しかし、アニメは子供が楽しめなくてはいけない。風立ちぬ同様、考えすぎだ。外人には堕天使の話に映るかもしれないし、竹取物語を知らない人は、突然月に帰るって何?となるに違いない。我々は姫が月に帰る話と知っているから違和感を感じないが・・
 さて、映像のマイナス2点は何かというと、最後の最後で月の描写だけがいただけなかった。このファンタジーの中で、帰っていく星がクレーターだらけでは興ざめもいいところだ。