SACDシングルレイヤー盤でチュリビダッケのブラームスの交響曲を購入した。大好きな4番である。さぞかし音質には期待した。しかし、大いなる失望に首は項垂れた。
これはどうしたことか、80年代のデジタル録音ゆえに、SNが悪いわけではない。さほど大きな編成ではないにしても、音が腰高すぎるのである。ぶっちゃけて言えば、重厚な低音が欠片も無いのだ。この理由を考えてみる。
メジャーなレーベルによる著名な音楽家となれば、一流の機材が総動員して録音作業が進められよう。これはライブ盤なので、マイクの本数は少ないと思われる。オーケストラ録音の編集は大型スピーカーをモニターに使うに違いない。カラヤンが好んだB&Wのようにだ。大きくて反応が鈍いウーハーでモニタリングされて仕上がったソフトは、同様のスピーカーで再生しなければバランスが狂うのではないか。思い返せば昔、B&WのM801を使っていたときは充実したスケール感に包まれ、クラシックのCDで不満はあり得なかった。
FALのフルレンジとハイルドライバーの音は高純度ハイスピードである。ジャズや試聴に使う無加工のワンポイント録音のソフトは、すばらしい音楽が宙に舞う。しかし大半のメジャークラシック作品で、重厚な低弦の響きに酔うためには、低域をブーストする必要があるのだ。故長岡鉄男氏はメジャーなクラシックレーベルを歯牙にも掛けなかった。これも、方舟のシステムを思い出すと納得できる。
再生機器がいくら優れていても、シンプルな信号経路では、多くのソフトを不足なく再生することはできないと断言しよう。s(・`ヘ´・;)ゞ