シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

TENET テネット

 昨年の秋、その難解さで話題となったA級SFアクション作品。

 監督は、この手の作品を作らせたら右に出るものはいないクリストファー・ノーラン。特に「インセプション」や「インターステラー」が好きな人は、来た来た~といったところか。ところが、これは普通の難解レベルを遥かに超えている。

 「2001年宇宙の旅」のような哲学的難解とは意味が違い、複雑怪奇な話がアクション作品のスピード感で展開するので付いて行けないのだ。それをノーラン監督はわざと仕掛けている。その内容は詳しく解説したサイトや動画が多くあるので、そちらで確認されればよろしい。それらの解説無くして、オイラも理解が及ばなかった。

 タイムトラベル系なら自信があった。が、時間の逆行した人間と通常の時間で活動する者が入り乱れるアクションは、何度もリピートしなければカオスのままである。さらに、図解して個々の時系列を把握しなければ無理だ。しかも劇中で語られないバックストーリーの説明が無い。もはや超難問クイズの趣である。

 それでもオイラらしいコメントもしなくては。本作は単一時間軸でハードSFを展開するのだからハードルが高い。普通なら「バックトゥ・ザ・フューチャー」のようにコメディにするか、パラレルの時間軸を前提に設定する。そうでなければ、矛盾と疑問が尽きなくなるからだ。だから、本作も如何に物理考証を綿密にしようが疑問が残る。まず、避けられないタイムパラドックスについて。未来の科学者は逆行マシンを発明する前に、事の重大性に気が付かなかったという設定は苦笑ものだ。しかも、敵側の「そんなの関係ねえ」的な行動が引っかかる。この戦いは結末を知った上で、その結果になるよう自ら行動することになる。ある者達はあそこで死ぬと分かってそれを実施するのだ。その場の選択自由意志というものがないのである。これは、「未来は決まっておらず、切り開くもの」がテーマとなった作品が多い中、とても奇妙で理解しがたい世界観だ。

 この奇想天外な作品を、ノーラン監督はコロナ禍であろうと劇場公開にこだわり、海外では案の定不振に終わった。それもおそらく確信犯だろう。どうせ劇場で見ただけじゃ分からないのだ。今のDVD市場でリピードさせるのが本懐ではなかろうか。

 
Tenet Behind the Scenes (2020) | Movieclips Trailers