シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

プリデスティネーション

 2015年、ローカル公開のB級SF作品。ロバート・A・ハインラインの短編小説「輪廻の蛇」を映画化したものである。最初に結語を言っておくと、これは久々の大当たりである。
「輪廻の蛇」は昔、ショート・ショートSFに嵌っていたころに目にしている。タイムパラドックスという概念に興味を覚えた頃で、初心者にはその重さが印象に残らなかった。今になっての映画化にマジマジと観ると、素晴らしいアイディアが再認識させられる。この映画化は小説を超えたんではないか?知らない人は公式サイトすら見ないでレンタル視聴して、その後数ある解説サイトを見てからもう一度観なおすのが最も美味しい味わい方だろう。
 原作のアイディアがいかに秀逸でも、映像表現が下手ではお話にならない。この作品はそこがアッパレな出来なので、相乗効果によってカルト名作に名を残せそうなものに仕上がっている。
 主たる俳優は、イーサン・ホークサラ・スヌークの二人。イーサン・ホークは何といっても名作「ガタカ」が思い出される。今回、それに匹敵する作品だ。注目はサラ・スヌークという女優で、オイラは知らなかった。その驚愕する演技力に舌を巻く。この2人の会話が作品の半分以上を占めている。だからSFといいながらも、まったく派手なVFXは無い。名B級SFとはそんなものである。
 さらにオイラが褒めたいのは、古典の原作が生まれた頃のSF感を一切変えないでビジュアル化したことだ。当時の未来感は大変レトロな風情を残し、それが素晴らしい味になっている。1980年代に小型タイムマシンが開発されたという設定に、優しい目で観ることができるのだ。
本作に生理的な疑義を感じる人も多いだろう。それを含めて哲学的な深さも匂わせる秀作である。