近年、アメコミのダーディーヒーローが人気を博し、それにあやかるように映画界でもダーティーな主人公が注目された。それはダーティー・ハリーのような公職ではなく、世捨て人のヒーローであって、スタローンの「バレット」、メルギブソンの「キックオーバー」などなど。トムクルーズの本作も、その代表作と言える。
しかしこのアウトロー、どっちつかずの中途半端である。ジャック・リーチャーというキャラは、まったく個性が見えてこない。バッジが無いだけの正義の味方にしか見えず、毒が足りない。おまえはジャッキー・チェンかと言いたい。
アクション映画なのか、クライムサスペンスなのか、はっきりしない。大した謎も無ければ緊迫感も無いし、カーアクションも古臭い。まあトム自身がやっているのでこんなもんだろう。黒幕のゼックは結局何者かも不透明だし、制作費も大作でもB級でもない中等だ。
ただ、共演者は面白い。極悪非道な敵の殺し屋がジェイ・コートニー、ダイハードでブルース・ウィリスの息子になったが、悪役の方が似合っている。敏腕弁護士にロザムンド・パイク、こっちはサロゲートでブルースの妻だった。今回はタイトスカートから覗く太ももが眩しい。脇をロバート・デュバル、リチャード・ジェンキンスといった名優が固めて基礎は磐石だ。
半端を通した結果、主役のトムの印象が薄くなり記憶に残らない。TVシリーズになりやすい設定だが、こんな魅力のないキャラでは第1シーズンで打ち切りだろう。