シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

懐かしのポール・モーリア

 ポール・モーリアを始めて耳にしたのは、中学1年の頃だったと思う。初めて聴いた「エーゲ海の真珠」のEPに針を落とした後、こんなに美しいメロディがあるのかと感動したものだった。惚れてしまうと、情報網の稚拙な時代でも「オリーブの首飾り」「恋はみずいろ」といった歴史的著名作にはすぐにたどり着いた。もう、彼のタクトは魔法にしか思えなくなった。
 ポールはアレンジだけではなく、作曲家として残した名曲が多い事でもイージーリスニング界のリーダーと言わしめた。しかし彼の音楽は後年になって電子楽器を多用する傾向になり、よりポップに傾いていくのがオイラには寂しく思えたものだった。全盛期の、オーケストラにチェンバロを加えた独自性と、歌う旋律で勝負していた頃の曲が今聴いても素晴らしい。
 親日家のポールが日本の歌謡番組にゲストで喚ばれたことがあった。西城秀樹のバックで演奏を行ったのである。するとどうだ、完全に主役の秀樹を喰ってしまい、実に違和感大の演出になってしまったのである。彼の楽団演奏は、決して主役をサポートするバックミュージックではないということを辛くも証明してしまったわけだ。
 そんなポールも他界して早7年になる。そんな折り、全権を持つポール婦人の協力を得て、新ポール・モーリア・グランド・オーケストラが結成された。そのアルバムが一昨日アップした画像の一枚だ。それもSHMCD仕様でダイレクトカッティングという高音質盤である。
 さっそく聴いてみたが、これは百歩譲ってもポール・モーリアとは認められない。流麗な旋律は影も形もなく、トロ臭い演奏でお話にならない。さらに高音質どころか厚ぼったいだけの肥満した録音で、久々にCDで失望極まった。
これを耳にした後、オリジナルを聴くと、その良さを再認識できる。偽物は所詮、本物を光らせる役目しか担えないものだ。