シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

タンノイ オートグラフ

 先日、タンノイのオートグラフを聴かせてもらった。それも復刻版ではない。なんと1960年前後のオリジナルだという。
 当時は仕様が色々と変遷したようで、何をもってオリジナルとするかで疑義になりそうだが、オイラにとってそんな細かい定義はどうでもよい。ユニットもモニターレッドというお尻の赤いオリジナルタイプだ。オイラは進工舎が復刻したエンクロージャーのモデルは見聞したことがある。しかし外観からして、このオリジナルのオートグラフは全く違う。
 エンクロージャー背面の仕上げ、サランネットの色、材質は明らかに復刻版と異なり、古式ゆかしい雰囲気が漂っている。職人がホコロビを丁寧にレストアしたそうで、傷などは見当たらない。これを鳴らすのはアンプがラックスキットの中古品。マッキンの古いプリ。サンスイの20年位前のCDPだ。決して高級品ではないが、オートグラフにマッチしたビンテージ色が漂っている。さあ、聴いてみよう。
 真空管が冷えた初っ端なのにバランスの良い音が出てきたので驚いた。多少細身だがこの先スゴイ予感がする。
 なんという甘美な音か!こんな弦の音は聴いたことがない。もちろん、現代スピーカーのような解像度、透明度、ダンピングの効いた低域なんて無い。だからハイスピードなジャズ、ポップスはミスマッチだ。その代わり、ボーカルやクラシック、特にチェロのような楽器では陶酔に近い美音を奏でる。写実とは対局の完全に創られた音であるが、それが何か?と言われたら言葉も出ない。
 しかしせっかくの機会なので、酔ってばかりじゃもったいない。しっかり耳タコディスクを聴き通して面白い事実に気がついた。このスピーカー、高音質ディスクの魅力を発揮しないのだ。平凡な音質のディスクは美音に変えるが、正確無比なトランデューサーの資質はおかど違いという事だろう。品のないオノマトペ的表現で言えば、その高域は「シャキ〜ン」ではなく「ゾリ〜ン」であり、低域は「ボム」ではなく「ボワン」だ。だが、三半規管を恍惚とさせる良い音にはこうした世界もあるのだ。
 大変勉強になったなあ。さて、気になるお値段はプレミアが付いてとてもここで公表できない。なんでも鑑定団に出せば「オオ〜!」と声が上がることだろう。

たまにショップで見かける生っ白い箱のオートグラフと風格がまったく違う。