シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

シンクロニシティ

 2016年のC級SFサスペンス作品。久々に気合を入れて観る気になった掘り出し物である。
 DVDの謳い文句を読むと、タイムパラドックスをテーマにしているのかと思いがちだが、実はまったく違う。これはサイエンス・サスペンスが好きな無名監督が、オイラのようなSF好きの偏屈な映画ファンだけをターゲットにして、難解なパズルを魅せ付けた作品だ。無論、オイラの琴線に触れた事は言うまでもない。自分でも不思議だが、こんなC級品を4回も観返すことになった。
 出演者はマイケル・アイアンサイド以外は無名。しかし演技は実に良い。特にヒロイン役の女優は、複雑な感情を見事に演じ切って大変魅力的だ。
 本作の見どころは、時間移動と平行世界(パラレルワールド)の巧妙な造りで、紐解けば5つの平行世界が関与している。デンゼル・ワシントンの「デジャブ」を思い出させる複雑さで、今回は自分なりにその展開を作図してみた。これだけややこしい世界観に、不要なパラドックス理論を織り交ぜているから、観ている者は終盤まで同一時間軸の話かと勘違いする。それがこの監督の罠で、さらに平行世界が実に相違点の少ない設定なので分かりにくい。まさにコアなSFファンへの挑戦状のような一品だ。それだけに謎が残ると悔しくてリピートしてしまうし、全貌が分かったときの感慨はひとしおだ。
 物語はサスペンスというより実直なラブストーリーであって、夢を追う天才物理学者が恋に破綻していく様を描いている。それでいてハッピーエンドに終わるラストがとても心地よい。たしかに低予算ゆえのツッコミどころもあるが、この作品の趣旨からしてヤボなことを言うもんじゃなかろう。むしろ一番予算のシワ寄せがくる背景描写や音楽を、これほどコスパ高く効果的に挿入している事に拍手したい。
 大人のSFファンには、内容とアイディアで思いっきり勝負してきた本作をぜひ観ていただきたい。

この予告編は内容の趣旨と全く異なる。大人の女性に観てもらいたい。

Bの平行世界から展開する赤ラインが主人公の動きだ。他の色は別世界の主人公であって、互いに重なる存在があるため、脇役の演出や恋人ヒロインの演技に注目。この解説図はオイラの独論なので間違っていたらご勘弁。