番組の「岸部露伴は動かない」については以前レビューしている。(2021-1-9 岸部露伴は動かない 参照)あの時はまだ3話しか公開していなかった。今では9話まで製作され、本作のような海外ロケをした2時間スペシャル番組まで作られる人気ぶりだ。すべて観てきているが、その感想は2021年の頃とほとんど変わらない。
最新作の9話「密漁海岸」や本作を観ると、遠い過去の柵が怪奇現象を引き起こす話になり、諸星大二郎の「妖怪ハンター」シリーズを思わせるので楽しみだ。リアリティを得るための取材・・という主人公のスタンスが、壮大な異世界体験に導かれる話になって欲しいと思う。
ただ、オイラが危惧する違和感も依然として残っている。それは、以前も書いた主人公の特殊能力について唐突過ぎるという点。おそらく、TVドラマでは原作のスタンド能力という設定から離れたものなのだろう。実際、他に能力者が出てこない。それゆえにヘブンズ・ドアの能力の発揮場面だけがファンタジーになるため、違和感が強いのだ。そして、その描写もチープなのがいただけない。見せ場なのだから、手間を掛けたCGで処理するぐらいの予算を掛けて欲しいと思う。
本作のルーブルロケのシーンは少なく、主人公の若い頃の回想シーンが長すぎる。よって悠長な印象が拭えず、登場人物の数を含めて2時間も掛ける話ではない。もっと密度を上げれば90分ほどでまとまったであろう。
主人公を演じる高橋一生はまさにはまり役で、怪奇な方向性も好ましいだけに惜しい気がする。次作に期待しよう。