以前はCDトラポ+DACでCD全般を、マランツSA-11S2でSACDを聴くスタイルであった。X-03SEを購入するときも、似た音では面白くないがスタイルを変えるつもりは無かった。ところが、X-03SEが飛び抜けたクールな音を出したため、これを機にロックやジャズ、フュージョンのようにパルシブな反応の爽快感を味わう系と、クラシックや女性ボーカルのように心地よい音場や情感溢れる声を味わう系に分けて、前段機器を選ぶスタイルにしてみようと考えた。ただ、SACDを聴くときはクールサウンドに限られるが、この先SACDを増やすつもりもないので割り切ろう。
そうなると、CDトラポ+DACのラインは全ジャンルを扱わなくてもいいので、もっと優しく音場重視で色気のある音へ振ってみたい。これは二背反律で悩む事が無いのでやりやすいはずだ。試聴ディスクも選別できる。まずはCDトラポ+DAC系の機器を軽く紹介して置こう。トラポはCECのTL3-3.0で、DACは日本オーディオのDA-5000Wだ。ベルトドライブのトランスポートと管球式のDACは今回の目標に寄せやすい。脳内イメージがピッタリなのだ。
さあ、何を変えようか。まずはトラポからの出力をアップサンプリングしてみる。TL3-3.0は、外部クロックからの信号は44.1kHzだけなれど、88.2kHz、176.4kHzにアップして出力することができる。今まで44.1kHzに固定して使ってきたが、良い機会だ。DA-5000Wは公称していないが176・4kHzも受信する。しかし、希に音飛びするときがあり安定感に欠けるため、ここは88.2kHzに期待しよう。
すぐに分かるのは音楽が一歩下がる事。まるでホールの5席ほど後方に座った印象だ。したがって、ギターのピッキング音のような演奏ノイズは遠ざかる。協奏曲が扇を開いたように後方へ広がる。そして、録音がイマイチな歌謡曲の粗を適度にぼかしてくれた。これはまさに、してやったりである。このままでもX-03SEとは正反対の味わいなのだが、良い事ばかりでなくボーカルの存在感も下がっている。思えば同じホールであっても、クラシックと違ってボーカルではマイクを使う。再生するに同じ音で満足するのは無理なのかもしれない。また、DENONレーベルのクラシックはアップサンプリングを受け付けないのを思い出した。(2021-7-10 CEC TL3.0 意外な事実 参照)
目標がハッキリして調整が容易いと思いきや、こりゃ難問だ。 ~つづく~