2008年作のロシア製SF大作だ。SFといってもそれらしい部分は冒頭の宇宙船墜落のところだけで、後は主人公が旧態依然の独裁洗脳社会をぶっ壊していく様を描いていく。
骨組み自体は「ジョン・カーター」と同じようなものなのだが、その風情にはファンタジーロマンの欠片もない世界感である。
原作を書いたアルカージー・ストルガツキーという有名な作家の代表作「ストーカー」という映画は、信じられないほど悠長で暗いしろものだった。本作もその匂いが無いでもないが、もともとロシア映画は根暗なのでその覚悟で見れば意外とハリウッド大作に近いじゃないかと思う。
出演者は知らない俳優ばかり。唯一、ユーリヤ・スニギーリだけはダイハードの最新作に出ているので、個性的な表情とグラマーな体が目に新しい。
何しろ長尺な話を2時間に凝縮したので、ストーリーと人物設定が希薄なのは仕方がない。なぜ主人公があれほど超人的に強いのか、説明なしで突き進む。しかし金の掛かった重い映像は見事だ。陽気なハリウッドではこのようなデザインと風情は出し得ないだろう。
クライマックスの展開は意外な落とし方で、主人公の行為を正義のヒーローによる単純な勧善懲悪とまとめていない。破壊した相手が洗脳独裁政権であってもだ。これには新鮮な感慨を覚えた。自由を訴える主人公と混乱する社会とを天秤に掛けようとするラストが、ロシア人の心を映しているようだ。