2019年のリュック・ベッソン最新作。落ち目のベッソンが巻き返しを図るには、もう原点に戻るしかない。そう悟ったかは知らないが、女の殺し屋を主人公とするスパイ・アクションに再度手を出した。
「ニキータ」という名作を生み、そこに戻るのは奮起の最後の手段であろう。市場の目は厳しくなる。なぜなら、ニキータと同レベルかそれ以上の作品を求めてくるからだ。先に結果を言えば、オイラは満足であった。
まず、主演のサッシャ・ルスという新人が素晴らしい。16歳でスーパーモデルになり、翌年いきなり主演女優という大抜擢。当人は体中痣だらけになってアクションをこなした徹底ぶり。その成果は見事な身のこなしで、長身の美女がスピード感高く躍動する格闘シーンは見ごたえ十分だ。そして、なにより美しい肢体が醸すエロスがいい。
脇を固める布陣も手抜かりない。ヘレン・ミレン、キリアン・マーフィー、ルーク・エヴァンスといった悪役もできる渋い顔ぶれが、スパイ活劇の緊張感を補完している。特に、ヘレン・ミレンは老獪にしてさすがの演技だ。
ストーリーも、2重スパイの話にしては実に分かりやすい。表の動きを見せた後、裏の真実を魅せる流れも大変効果的で、特にクライマックスの展開は新鮮であり、予測し得ないスパイ映画として拍手を送りたい。消化不良で終わるボーンシリーズより、オイラは遥かに本作を褒めたいと思う。中盤まではニキータの焼き直しかと諦めかかったが、それも観終わってベッソンの確信犯的演出だろうと感じる。
ベッソン監督はやっと面目躍如といったところだ。