シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

闇の狩人

 池波正太郎による江戸時代の闇の世界を描いた名作。本作は仕掛人藤枝梅安鬼平犯科帳と同じ世界観の中の一遍であり、マーベル・シネマティック・ユニバースの江戸版と思えばよい。

 この原作を元にした映画版として、五社英雄が監督した1979年公開の超豪華俳優陣による作品がある。これはエンタメとして実に面白いが、原作とはかなり内容が異なり、暗黒街の抗争が主軸となったハードな必殺テイストであった。映画スケールで描くための手法として成功したA級作品だ。

 その後、TVドラマとして原作に近い形で1994年にスペシャル放映されたそうだが、残念ながら未見だ。そして、2014年に時代劇専門チャンネルで前編後編に分けて放映されたのが今回の本題である。オイラは本作をツタヤでDVDをレンタルして鑑賞、言ってしまえば実に感慨深く感心したドラマであった。

 五社英雄監督の映画版とは異なり、江戸の厚い人情を終始描いていて、とても心温まる作品だ。それでいて緊張感のある作風であって、光と影を巧みに操ったカメラワークが秀逸だ。提灯の光しかない江戸時代の夜が多く描写されるが、大変見やすく実に美しい。また、脇を津川雅彦をはじめ、田村高廣秋野太作本田博太郎石橋蓮司といった必殺ドラマの常連が老獪な演技で引き締めている。よって往年のハードな必殺テイストを覚えながら人情劇に落とすため、そのギャップが実に新鮮なのである。

 オイラは最後まで悲劇が来るんじゃないかと思いながら、いい意味で裏切られて気持ちよくホっとさせられた。鬼平犯科帳仕掛人が好きなら見るべき作品だ。

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