ジェームズ・キャメロンが製作に復帰して、T2の正当な続編だと期待を振りまいた本作を観た。劇場では久々に見る大入り状態で、このシリーズの人気のほどが伺える。しかし、こりゃダメだ。
たしかに最新の映像による迫力とスピード感は素晴らしい。しかし、後半のアクションが暗くて複雑な上、設定場面が観客の日常風景から離れているため分かりにくいのは難点だ。それでも、思わず手に力が入ってしまうほどの畳み掛ける危機は、これぞキャメロンのターミネーターと感じさせた。
久々に登場したリンダ・ハミルトンは、ババアになってもサラ・コナーぶりを発揮、正直言って、これほどアクションをやるとは思いもよらなかった。と、褒められるのはこれぐらいだ。
本作は、その肝心なストーリーが完全にT1T2の焼き直しであり、続編と言うにはあまりにも芸がない話である。たしかに、冒頭のショッキングなサラの過去や未来の強化人間といったアイディアは悪くない。だがそれはパーツの一つであり、主軸はキャメロンの過去作を繰り返しているだけだ。それを満を持して3,4,5作目を否定した本人がやっているので頭にくる。
名作のT2をなどったために、より貧相な印象が拭えない。本作の主役は誰なのか・・焦点が定まらず、個々のキャラにバックボーンがしっかり描かれていないので、違和感が強く残ってしまう。たとえば、標的となる普通の女性ダニーがいかにして未来のリーダーになるのか、T-800型ロボットの改心と家族への愛情などは、本来T1やT2の中でじっくり築かれた本シリーズのキモの部分のはずだ。それがあったからこそ、アクション映画の中に深みを与えていたのに、本作の薄っぺらい説明だけで済ます扱いには呆れる。
本当にキャメロンの作品なのか?たとえば、本作が2015年に公開されて失望したキャメロンが、「新起動/ジェニシス」を作ったのならまだ分かる。ジェニシスの方が遥かに話が画期的で魅力があった。あれの続編が観たかったが、シュワはもう無理だろう。
映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』予告編【私のために死なないで】
このストーリーを生かすなら、老齢のサラを終始主人公に置いて、彼女の怒りから許しへの心の動きを追い、最後はサラ本人が自己犠牲となることで周囲へ大きな影響を残す話にすべきだったと思う。