ルビジウムクロックを再販売のマスタリングに使う高音質CDについては、これまで3回に渡り通常盤と比較してきて、すべてダメであった。それは解像度は上がったようだが、ハイ上がりで質感が薄く音楽を楽しめないものだった。ただ、これはいずれも女性ボーカル盤であり、別のジャンルなら違う印象もあるかもしれない。そこで、今回入手したのはムローヴァとアバドによるヴィバルディの「四季」である。
本CDのオリジナルは、長年オイラの試聴用ディスクとして愛用してきた。まさに耳タコで、数えきれないほど聴いている。当時はフィリップス製であったが、今ではDECAに吸収されており、同じジャケットでもそこだけが異なっている。
クラシックでも、ヒラリー・ハーンのヴァイオリン協奏曲はルビジウムクロックでマスタリングされてものを持っている。いつだったか、ハイ上がりで聴けたものではないと書き込んだ記憶があり、その強烈な先入観が拭えない。
まずはオリジナルを聴く。酷使しているが、大事に扱ってきたので盤面にほとんど傷はない。試聴曲はいつも冬の1番だった。久しぶりに聴くと、当時すごい奥行感に感心したのがさほどでもない。近年のスカっと広がる音場感と異なるマッタリした空気感が広がる。ただこれは当時のフィリップス盤の特徴で、硬さの無いこの質感が当時のオイラには歓迎されたのだ。だから我が家のクラシックはフィリップス盤が多い。
さあ、 ルビジウムクロック盤の番だ。一聴して、ゲインが同じのようでホっとした。そしてすぐに興味を引いたのは、ハイ上がりではないことだ。それどころか、逆に低重心で、素晴らしい音の分離である。マッタリした質感は薄れて鮮度が高い。一番驚いたのが、音場の形成がキチっと水平方向に奥深く見えることだ。
比較するとオリジナルは上下感が曖昧で、フワっとした広がりなので高さがあるかのように聴こえるが、配置がバラけているとも言える。ルビジウムクロック盤の音場を例えれば、スターウォーズのオープニングテロップのように奥まで整然と並んでいると言えようか。
考察すると、まず解像度の高さと音場の正確さは、ルビジウムクロックの恩恵であろう。鮮度感のアップは、長年使用によるCDの劣化が、マッタリ感を強調しているのかもしれない。DECA盤になっても、質感まで変わるとは思えないからだ。
お役御免となっていた試聴盤は、見事に蘇った。