シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

イップ・マン 継承

 イップ・マンは葉問という詠春拳の達人で、ブルース・リーの師として実在した人物だ。中国では超有名な武術家であって、いくつかの伝記作品がある。以前書き込んだ「グランドマスター」もその一つだ。
 本作は主演にドニー・イェンを迎えたシリーズで、「序章」「葉問」「継承」と続いている。史実に忠実というわけではなく、あくまで英雄の活躍をドラマチックに彩ったエンターティメント作品であって、遅咲きのドニーにとって出世作と言っていい。
「序章」「葉問」は抑圧された中国の歴史を背景に、旧日本軍やイギリスを相手に異種格闘技戦を大きな舞台で展開するパターンであった。この王道路線は、主役がカリスマ的魅力を持って初めて成立する。ドニーはまさにハマリ役と思う。
「継承」は前2作と趣きを変え、晩年の英雄とその家族を描くことでグっと身近なテーマにポイントを置いている。よって、アクションは過激でも静かな印象があり、より大人の鑑賞を意識した造りを思わせるものだ。
 ドニーのアクションは相変わらず凄まじい。また、詠春拳の達人という設定なので派手な大技は繰り出さない。実践武術としてのリアリティがオーラを纏って迫ってくる。マイクタイソンとの闘いは、結末に苦笑いではあるが迫力は他には無いものだ。そして、クライマックスの詠春拳継承を掛けた同門同士の戦いは、ありきたりと思いきやマニアを唸らせる結末となる。なんと、ワンインチパンチで倒すのだ。これは冒頭から、ブルース・リーのそっくりさんまで登場して伏線を貼ったニクイ演出だと感じた。(ワンインチパンチは、ブルース・リーの公開演武で知れ渡った中国武術奥義の発勁のことである。)
 本作は若干中だるみを感じはするが、大人のための真面目なアクション作品として良品だ。