シマの遠吠え (新生)

シマの遠吠えが新生しました。 でも内容は変わらず、素人オーディオ感、SFやアクション映画の感想を軽いフレーズで書き込みます。

007 スペクター ネタバレ

 土曜の朝一で見に行って来た。クレイグ・ボンドの中では満足できる出来だったと言っておこう。
 まず、冒頭のメキシコ「死者の祭り」でのエキストラの規模からさすがA級作品と思わせる。そしてボンドの単独行動で停職、ご都合パターンで国々を回りながら敵の本拠地へ。ボンド映画の定石を踏んでいる。さらにボンドガールもモニカのオバンをチョイ出しして、毛色が正反対のセドゥが最後まで観客をキュンとさせる。これも過去作に倣っている。
 内容は家族をテーマにしたがるサム・メンデス監督らしさがあるが、前作のスカイフォールほど深みに嵌めていない。また、大ヒットしたが暗すぎる前作の不評(オイラだけじゃないだろう。)を是正したつもりか、往年の楽しさを垣間見る流れに変更。ボンド・カーの特殊装備復活などがいい例だろう。
 さらにOO7シリーズの過去作から多くのシチュエーションをオマージュに仕立ててある。それが、分かる人だけがニヤけるレベルにしたのは心憎い配慮だ。
 これまでのボンドは孤軍奮闘する中で、たまにCIAの友人とか女スパイが助勢するパターンだった。それがサム・メンデス監督になってからは、MやQ,マニー・ペニーが全力でサポートする、まさに家族一丸となっての奮闘劇になっている。この新しさは監督が変わっても続けて欲しいシークエンスである。
 今作はクレイグ・ボンドの中では一番なじみ易い作風といえるが、さて・・何かが足りなく感じる。昨今のリアリティと楽しくウィットに富んだ余裕のボンド、すべてを融合して大満足になるはずなのにだ。期待が大きすぎたのだろうか。劇場に来た客層はオイラと同世代かさらに上がほとんどで、望むものは同じであったろう。クレジットが流れて足早に席を立つ御仁が大変多かった。結構な入りであったが、感想を漏らす声も耳にしない。
 リアルとドリームは融合しないのである。これまでの地味で暗いボンドから、ちょっと昔のファンが喜びそうな流れにしてみよう・・では中途半端なのだ。毎回言っているアクション映画のタブーである。リアルを追うか非現実的なエンタメを狙うか徹底しなければならない。
 サム・メンデス監督は、どうしても内面的な質を追うがためにリアリティがバックに必要となり、アクションが地味になってしまう。それでいて実はリアルではないので突っ込まれる。敵の本拠地爆破に2100ガロンの灯油を使うだなんて、呆れるほどリアル・アクションではない。もちろん、ロジャー・ムーアのOO7ならありだ。
 だからオイラは今回、思い切って徹底的にコメディにしたほうがよかったと思う。ありえない派手なアクション、笑い、大団円だ。コメディにすれば質的にもムーンレイカーをオマージュにしたと言えるじゃないか。そのくらい徹底しなければ、ダニエル・クレイグ仏頂面で楽しい作品は無理だろう。